2010年12月7日火曜日

オランダの新聞デジタル化プロジェクト

オランダの新聞のデジタル化は、オランダ国立図書館(KB)が一手に引き受けてDDD(Databank of Daile Digital Newspapers) というプロジェクトで行っています。KBのご自慢プロジェクトのひとつで、何度か職員の方から説明を受けました。

まず、基本的なこととして、デジタル化は「プロジェクト」として行われ、プロジェクトマネージャーが設置されます。デジタル化までは大きく二つのステップです。

(1)Selection and Preparation (選択と準備)
デジタル化範囲の決定と準備作業を行います。デジタル化対象について、意思決定します。必要に応じて外部の意見も聴取します。意思決定の後は、瑕疵のないコピーを揃え、保管場所を整え、デジタル化に伴う定型作業のワークフローをマニュアル化することがメインです。新聞については、原資料の劣化がかなり進んでいることを考慮する必要があります。既にマイクロ化されている場合は、その利用も検討します。

(2)Digitization(デジタル化)
新聞のデジタル化は、画像作成、OCR、メタデータ作成の3つの作業から成ります。新聞のように雑多な情報が入り混じり、利用者の利用目的も幅広いコンテンツについては全文検索ができないと使い勝手が悪いので、OCRによってテキストデータが作成されますす。(余談:このときの苦労経験が現在EU単位でのOCR精度向上プロジェクトIMPACTにつながっています。)また、充実したメタデータが付与されます。記述メタは、他のデジタル化済資料群と同じくダブリンコアに基づきます。必要に応じて要素を足します。たとえば、朝刊or夕刊の別、地方版の地方等が追加されます。その他、新聞については特に、構造メタ(Structural Metadata) とレイアウト・メタ(Layout Metadata)というのが重要視されます。構造メタはMPEG21-DIDLに基づきます。第何刷の何ページ目に掲載された記事か、という各記事の(概念上の)位置を特定する階層関係が記述されます。レイアウト・メタはALTOという基準です。各記事の、各ページ(平面)における物理的な位置を記述します。新聞は異なる情報の配列が複雑に入り組んでいるので、全文検索の検索結果をハイライトで表示するのに必要だそうです。

KBサイトによるプロジェクトの紹介はこちら>http://www.kb.nl/hrd/digi/ddd/index-en.html

2010年7月17日土曜日

オランダの博物館のコレクション史(図書紹介)

現在のオランダのいくつかの国立博物館に分散するコレクションの歴史について、最近(すごく)面白い本を読みました。

Rudolf Effert, Royal Cabinets and Auxiliary Branches: Origins of the National Museum of Ethnography (English translation, 2008)

オランダで博物館を訪ねる予定のある方は、訪問前に是非ご一読ください。

現在オランダには女王様がいるので、昔から王政がしかれていたかのように思われがちですが、「王国」になったのはナポレオン統治後、19世紀に入ってからです。ハーグの「王立」図書館とアムステルダムの「王立」博物館は、ナポレオンの弟で一時期フランスによって建てられたオランダ王国の王様だったルイ・ボナパルトによって設置されました。

その後、オランダが独立を回復して、かつての総督の血筋であるオラニエ=ナッサウ公ウィレムが亡命先のイギリスから帰国した際に、「王様」になりました。この王様が学術振興に興味を示し、英仏のようなRoyal Cabinets(国内外の美術品や書物、珍しい品々、産品を集めた王様のお宝コレクション)の構築を始めました。

出島の重役にあったブロムホフやフィッシャーが集めた日本の産品や書物は、このRoyal Cabinetsの初期の重要なコレクションになります。人々に公開されたRoyal Cabinetsのコレクションは反響を呼び、乗りのよいオランダ人ですから、市立、私立、なんちゃって国立、、、と制度の整わないうちから博物館が乱立し、各地の商館を拠点に展示品の収集が活発に行われるようになりました。その後、シーボルトが持ち帰った日本の産品も国に買い上げられます。

…が、オランダはなんといっても小さい国、イギリスやフランスに比べると何よりも土地が、そして国の財力、人材も限られています。ベルギーの分離独立後はとりわけ財政的には苦しく、各地の博物館は一方では適切な施設・設備が得られず、一方ではコレクション構築を寄贈、物々交換に頼り、はたまた一方では一人が複数の館長職を兼ねるという悲惨な経営状況に陥ります。

さらに、時代は百科事典的ななんでもありの博物館から、「美術館」「歴史博物館」「産業博物館」「民族学博物館」のように個別化していく方向へ。劣悪な保存環境をかろうじて生き延び、物々交換の対象からも免れた品々をめぐって、各館長間の争奪戦が繰り広げられます。この館長たちがまた個性派揃い。シーボルトのように自分の研究と政治的なことにしか興味がなく、コレクションの管理はまったくできず、むしろ資料の亡失と損傷に貢献した人もいれば、適切な保管環境を確保するための所蔵品の分散配置の準備が面倒で、延ばしに延ばした挙句に他の人に押し付け、最後になって決まった分配に文句をつけて漆器や出島商館模型などの目を引くコレクションだけ自分のものにした館長もあり、そんな困ったチャンに翻弄されながら地道にできる限りのことをした少数の善良な館長がおり…涙と憤りなしでは読めません。

このような状況から、オランダに渡った日本の産品は、オランダ到着後、最終的にその大部分がライデンの民族学博物館に落ち着くまでの67年間、数奇な運命を辿ります。1860年に将軍から送られたたくさんの屏風は、欧州各国の博物館に物々交換されていきました。オランダ国内に残るコレクションについて、いったい何が誰によってもたらされたのか、ということの解明はいまだに続いているそうです。

オランダ語からの英訳なので、やや文意がつかみかねる部分もありますが、近頃読んだ本の中では抜群に面白かったです。当時の関係者の書簡資料も数多く引用されています。

2010年7月11日日曜日

2010年6月24日木曜日

ワールドカップ

日本とオランダ、仲良く揃って第二ステージに進みました。ぱちぱち。
フランス語のチャンネルでゲームを見てたので、あのフランス語独特のふにょふにょした音の「ジャポネー、ジャポネー」が耳について離れません。「エンドォ、セ トレー トレー ボン。」「アブソリュモン シュペー(r)。」うぉうぉ。こそばゆい!

2010年5月19日水曜日

OA出版における出版社の役割

昨日、シュプリンガー・アカデミックのAlexander Schimneipennick氏から、オープンアクセス(OA)出版における出版社の役割についての講義がありました。同社は、「著者」を顧客として、OpenChoiceという「OA出版サービス」を展開しています。同時に「読者(図書館含む)」を顧客として、SpringerLinkという「文献提供サービス」を展開しています。(注:SpringerLinkはOA以外e-journal,e-bookも含めてSpringer社の持っているコンテンツをすべて検索できるサービスで、そのうち無料で全文閲覧できるもの(OA)については検索結果の左側に緑の印が出ます。)

結論は、出版社の仕事というのは、とどのつまり、この著者と読者をつなぐ「サービス」であって、「求められている」サービスを提供できれば、それに対して対価を支払う人はいるのだ、ということでした。

では、何が求められているのかというと、著者にあっては
・そこ(SpringerLink)に乗せればより多くの人が著作を読んでくれること
・研究成果がすぐに公開されること

読者(図書館)にあっては
・固定された、安定したコンテンツの所有者(perpetual accessのこと)になれること
・コンソーシアム契約ができること
・付加サービスが得られること(研究成果の地理的分布図、用語辞典のオンライン提供)

そして、この「サービス」の品質管理(Quality Control)のためにSTM出版社の編集者が行うことは、質の高い論文を得るための人脈作り、つまり著者とピア・レビュー要員の確保(ここは昔から変わらないコアの部分)。

OA出版について納得できることは、「公のお金でなされた成果は公に還元されるべき」という主張。一方で、「アフリカの子どもたちを救うために医療情報を無料で提供しなくてはいけない」といったような感情論は妥当でない。なぜなら、学術出版社が扱う情報は基礎研究的なものが大半で、現場ですぐに役に立つといった種類のものではないから。Springerは雑誌記事についてのOA対応はかなり進んでおり、Ebookについても取り組み始めたところ。

著者が、OA出版サービスを購入するという形のビジネスだが、著者の支払う価格はこのサービスを利用する人が増えれば下がることになる。

読者(図書館)の需要を満たすためには、「いったん出版したら原則コンテンツに変更は加えない」ということは非常に重要(Policy of integrety of materials)。(これについては、学生から「なぜコンテンツの入れ替えが容易という電子出版の利点を利用しないのか」という質問があったが、回答は「マーケットが求めているのは安定したコンテンツだから」という回答。)

現在、OAで出版される点数は増えており、STM出版社はこれには対応せざるを得ない(参考:DOAJ, Directory of Open Access Journal)。Springerは著者が自分のウェブサイトや研究助成機関のウェブサイトに論文のpre-printを掲載することを認めている。

同様のビジネスを展開している目下のライバルは、Hindavi, PLoS, Nature.com, Cell Death & Desease。

E-bookについては、E-journalとはやや異なる仕事の組み立てが必要で、目下検討中。
また、現在若い研究者に期待したいリサーチ分野としては、新しいソーシャル・メディアをどのようにSpringerの製品に取り込めるかという点。(「facebookの学術コミュニティへの影響」
について修士論文を書こうとしてる学生がいる、と教官が補足コメント。)インターンでSpringerに来る場合はこの点に取り組んで欲しい。Springerは、研究者のための研究者による出版社だった。ソーシャル・メディアによって我々の在り方が変わることができるのかどうか、というところが我々自身にも未知のところである。

…とだいたいこのような内容でした。より充実した情報はこちらから>http://www.springer.com/open+access?SGWID=0-169302-0-0-0

2010年5月17日月曜日

ふむ。

Wired Vision『「情報過多の時代」の鍵は「キュレーション」』http://wiredvision.jp/news/201005/2010051723.html
目に見える形、見えない形で起きている情報選別。
原文(英) http://www.wired.com/epicenter/2010/05/feeling-overwhelmed-welcome-the-age-of-curation/

2010年5月10日月曜日

ルーズリーフ式の手帳とか音楽とか

BBCで80年代についてのドキュメンタリーをやっています。音楽からテレビ番組から政治から何から、いかにばかばかしかったか(しかしいかにそれが今につながっているか)というようなストーリーに組み立ててあるのですが、どうやらルーズリーフ式の手帳がヒット商品になったのがこの時代らしいです。「いつもスケジュールがいっぱい!」な"go-faster generation"に受けたとか。

ところで、先日ジュネーブの民俗博物館で民俗音楽に関する展示を見てきました。最後に、現在の国別の音楽の商業的な売上げによる収入が、国の面積比として表示される特殊な地図が展示されていました。

日本、ダントツで大きかったです…。恥ずかしいくらい。

世界的に見て、英語圏の音楽より売れているとは思えないのですが、何かカラクリがあるんでしょうか。…で、やっぱりジャマイカとかルーマニアとかアフリカの多くの国とか、とてもとても小さいわけです。搾取の構造。。。

展示は「見る」より「聴く」展示でした。民俗音楽が記録され商業化していく中で、その調べやスタイルが変わっていく様子を聴いて体験することができるもので、小規模でしたが印象に残りました。

2010年5月7日金曜日

iPad。

知り合いのマックユーザーから強く勧められるiPad(オランダは6月発売予定)。「デジタルメディアとか勉強してるんなら経験しておかなくちゃ!」と言われ、MacFanやWired magagineの記事を読んで、その気になりつつあったのですが…。同分野の人と話すと意外としらけ気味。Appleが何やっているかわかったもんじゃないよねぇ…という反応もときどき。
参考> Brian.X.Chen,『強力な出版者としてのAppleと「検閲」の概念』http://wiredvision.jp/news/201004/2010043022.html
でもとりあえず買ってみようかな。ミニノートの代わりに。

2010年5月4日火曜日

オランダ児童文学


オランダ語イリテラシーから脱却のため、ちびちび努力していたオランダ語ですが、起爆剤が登場です。

左は、Toon Tellegen (トーン・テリヘン)という寓話作家の作品集、右は日本でもご存知の方が多いと思いますが Annie.M.G.Schmidt(アニー・シュミット)の『イップとヤネケ』です。テリヘンについては、こっちに来て始めて知りました。『イップとヤネケ』の方は、絵はよく知っていたのですが、記憶する限り読んだことはなく、オランダ原産ということすら(!)恥ずかしながら知りませんでした。こっちに来てオランダ人の友達に「子どものときに一番好きで何度も読んだ本」という折紙付きで貸してもらいました。

読んでみると、どちらもとても面白いのです。絵に味があり、オランダ語のリズムも心地よいです。

2010年5月3日月曜日

日本の(?)緑


4月末のジュネーブはとても温かく、花が満開でした。ちょうどライデンでシーボルトが持ち帰った日本の植物についてのレクチャーが開催されたところで、空港から市内への道すがら(5キロくらいなので歩いちゃいました)、ジュネーブ市内の日本から来たかも(?)な緑を楽しみました。かしわやカエデの新緑のほか、ヤマブキ、八重ヤマブキ、藤、アジサイといった花たちが、ポピーやパンジーに混じって元気に咲いていました。

Tessella社

Tessellaは、英国国立公文書館のファイルフォーマットデータベースPRONOMの作成やEUのプロジェクトのパートナーとして、電子情報の長期保存に古くから係わってきた企業です。英国国立公文書館、オランダ国立公文書館のほか、マレーシア国立公文書館、Wellcome Trust Library(イギリス拠点の医学情報図書館)、英国国立図書館等にOAISに基づいた電子文書リポジトリシステムを提供しています。
今回のECA2010での発表は、EUの電子情報保存プロジェクトPlanetsの一環として構築された電子情報の技術情報リポジトリの構築方法についての説明でした。技術情報リポジトリは電子情報の保存プロセスを自動化するための出発点であり、(1)旧式化を定義する要素、(2)マイグレーションツール及びエミュレーターに関する情報、(3)マイグレーションの成功度を図る指標、の三つを機械可読な形式で蓄えているとのことです。(1)については、各ファイルの機能レベル(例:更新履歴、パスワード機能)まで含めたかなり詳細なものになっています。それらの情報が、旧式化ファイルの抽出と処理プロセスの選択に必要だからです。成果はPlanetsの後継連合体であるOpen Planets Foundationのコア・レジストリへ引き継がれるとのことです。Tesselaの展開するOAIS準拠システムの詳細はhttp://www.digital-preservation.com/wp-content/uploads/DigitalArchiving.pdfを参照のこと。(新規の保存計画に係る機能ついては "Active Preservation" の項に詳しいです。)

2010年5月1日土曜日

ECA 2010


4月28日から30日の日程でジュネーブで開催された第8回ヨーロッパ・デジタル・アーカイビング会議(Conference on Digital Archiving)に参加してきました。いろいろ書きたいことはあったのですが、700名強のアーキビストたちとハイテンションな議論に揉まれてかなり疲労しており、何も手につかない状態なので、ちょっと気分転換に出かけてこようかと…。その前に、大雑把な雰囲気のみ。
日本では国会図書館がやっている政府系ウェブサイトの収集、ヨーロッパの多くの国では国立公文書館がやっています。従来の公文書の移管についての考え方だと作成から20年なり30年なり経てから公文書館に移管されるのですが、電子文書については、そんなに待っていたらリンクは切れるわ、ファイル形式は旧式化するわ、天変地異でファイルが失われるかもしれないわで保存上大きな問題なので、「早期介入」が必要ですね、というのが1点。イギリスやオランダの国立公文書館が「早期介入」の自分たちの取組事例を紹介していました。
もうひとつは、これまでどちらかというと「保存」に重点があったアーカイブ界ですが、これからはオンラインアクセスを積極的に考えていきましょう。デジタル化された資料はEuropeanaで一部提供されていますが、アーカイブ資料の多様性(と膨大な未整理文書)を考えると一足飛びにデジタル化を急速に進めるのは難しいし、アーカイブの伝統であるコンテキスト情報や文書の構造についての情報などの価値も未来に伝えたい。そうするとEuropeanaへの協力は協力として、国内レベルで二次情報も含めたポータルサイトを整備したい。あれあれ、となると、記録管理標準の適用について、公文書館間で足並みをそろえて、機械処理が可能なメタデータ標準を作っていく必要がありますね、というのが2点目。
3つ目は、EUの電子情報保存プロジェクトPlanetsの終期が迫り、成果が出揃ってきたのでその報告でした。この4年間で、電子情報保存プロセスの自動化については、技術情報リポジトリの構築と保存計画の策定の分野で大きな進歩があったようです。

2010年4月25日日曜日

予習中。

水曜日からアーカイブ系の会議を覗きにいくので、予習のためにアーカイブ系の雑誌を読んでいます。Archive Science の2008(8)号がDigital Convergence下におけるMLA連携についての特集です(Library QuarterlyとMuseum Management and Curatorship と合同で計14本の記事を掲載)。Archival Scienceに掲載された5本の記事はどれもなかなか読み応えがありますが、頭の整理に役立ったのは3本目のカナダ国立図書館公文書館(LAC)からの記事と1本目のドイツのMLA(美術館・図書館・文書館)ポータルBAMの開発者からの記事でしょうか。前者は、図書館と公文書館でどこが統合できてどこをそれぞれに取り組むべきかという点について整理、後者はMLAポータルを構築する上での公文書館の視点について示唆を得ることができます。その他、スミソニアンとFlickrの連携についてやアーカイブにおける「ジャンル」導入とその自動化についての記事があります。

2010年4月24日土曜日

オランダ食生活

 
「オランダの食事はおいしくないのでは?」とよく訊かれるのですが、答えは「いいえ」です。
たいていの食材は手に入りますし、ライデンは比較的大きな市場が週2回立つので、とっても新鮮な食材を安く買うことができます。
ワイン、ビール、果物も日本に比べると割安です。

先日、旅先で「いくら」の瓶詰めを見つけたので(これはさすがに近所では手に入りません)、炊き込みご飯に載せてみました。(邪道?)
モッツァレラチーズも、ふわふわ崩れそうなくらいに柔らかくて、ほっぺたが落ちそうなくらいおいしいんですよ。トマトは甘い。

さて外食は?
フランスに比べるとおいしいパンを見つけるのは大変。ケーキは、甘さ控えめでフルーツがたくさん使われているので、日本人の好みには合うと思います。おいしいケーキとコーヒー・紅茶の組み合わせが4ユーロ程度なので、ついつい日常的に食べてしまいます。レストランは、「オランダ人が行くところへ行け」。オランダ的肉の塊料理は、意外と美味です。野菜もたくさん付いてきます。名物のハーリング(にしん)の(浅)塩漬けも私は大好きです。土曜の昼ごはんはたいていハーリングのサンドウィッチ。市場の魚屋さんで売っているのです。
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2010年4月12日月曜日

アルドゥス・マヌティヌス

ついでに同じサイトから『わが電子「活字文化」論』なる記事。ふんふん、なるほど、と思って読みました。
マヌティウスについてちょっと補足しておくと、彼は「小型の本」という形を普及させ、美しい活字を使ったたというだけでなく、その小型の本で、それまでマニュスクリプトでしか読めなかった大量のギリシア・ローマの古典を印刷出版したことで有名です。そのために、学者によって構成される編集者グループを組織し、定期的にアカデミーを主催して、考証・校閲された質の高いテキストを新しい時代の読者(自ら考証はしないが、教養として古典を身につけたい読者)に提供し、成功しました。彼自身がギリシア・ローマの古典を愛したからでもありますが、「何」を新しい読者に引き継ぎたいかということについて明確なヴィジョンを持ったうえで大量のメディア変換を遂行したわけです。

2010年4月11日日曜日

む?

タイトルに釣られて思わず読んじゃいましたが、
「メタが出版を救う:青空文庫が注記ルールを公開」(Ebook2.0 Forum)
これって結局レイアウトに関する情報のみのような。これで「コンテクスト」とか「意味情報」って言ってしまっていいのかな。
(青空文庫の公開内容についてはこちら->http://kumihan.aozora.gr.jp/slabid-19.htm)

きっと論点は、今回公開されたメタに限らず、利用価値のあるメタ情報についてのルールを作っていくところにビジネスチャンスがあるよ、ということなのでしょう。

…にしても、テキストデータに関する意味情報というと、こちらの授業ではデジタルヒューマニティーズの分野で標準的に使われているTEI(Text Encoding Initiative)を習いましたが、これって出版界ではあまり使われていないってことなのでしょうか。(そもそも日本語版策定の試みの結末はどうなったのか。)教育書とか辞書・参考書の類とかで使っていてもよさそうなものですが。

うーむ。知らないことがいっぱいです。

チャイコフスキー交響曲5番

昨日に続き、デジタル化計画の宿題続行中。2日目ともなるとさすがに士気が上がらないので、ちょくちょく気分転換をしながら、能率悪く遂行中でした。そこへ!キッチンからチャイコフスキーの交響曲第5番です・・・!!!最高の快感!!!鬱々とした気分がすっかり晴れました。持つべきものはフラットメイト。がんばるぞい。

2010年4月10日土曜日

書架の長さから・・・

任意のコレクションについて、最適なデジタル化プロジェクトを策定する宿題を遂行中。ネタはもちろん在ライデン日本古典籍です。それ以外、よくわからないので。
もっと早くから始められたのですが、なんとなくだらだらしていて今朝から本気になりました。「お金がつくように書いてね」ということなので、どうしたらオランダ人がお金出してくれるかなぁ(そもそも仕事してくれるかなぁ)なんて考えながら、書いています。きっと「わくわく」しないとやってくれない、難しそうだとやってくんない…んだろうなぁ、、、
おおお、書架の長さからデジタル化するページ数を算出する方法…ってどっかにありそうですよね。見つかんないなぁ。…仕方ないので測ってみました。和本じゃないですけど、自分の書架で。15488ページ/mでした。とすると、ライデン大学の所蔵分だけで47mなので約73万ページ。2ページで1コマ(画像)とすると36.5万コマ。これに表紙の分を入れて(960タイトル分とのことですが正確な冊数は不明)、37万コマくらいでいいのかなぁ。でもぜんぶデジタル化する必要もないのかなぁ。

2010年4月7日水曜日

おいしいお酒?

 
ワインやビールが安くておいしいオランダですが(主に近隣国のおかげで)、どうやら私は強めのお酒をちょこっと飲む方が好きみたいです。チェコ系アメリカ人の友人が帰国するときにおいていった、チェコのお酒3種とアイリッシュウィスキー、疲れたときにちょこっと飲んでます。おいしい。世界は広いですが、お酒の世界はもっと広い、と思ったのでありました。
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ライデン大学の日本古典籍 その2

 
ライデン大学の日本古典籍はいろいろな装いをしています。ちょうどよい例があったので紹介します。
左から、和装のままマーブル厚紙の帙にくるまっているもの、和装のまま裸のもの、青いカバーで洋製本されたもの、茶色の専用の箱をあつらえられたもの、です。青いカバーの洋製本には、F.W.Binckという20世紀初めにハーグに店を構えていた製本家のサインが入っています。J.J.Hoffmannがよく使用したと見られる本に、このように洋製本された本がよく見られます。

ここに並ぶ4冊は、1896年刊のSerrurierという人が編纂したカタログでは、すべて『大全早引節用集』というタイトルの元に収録されていますが、実際はすべて異なる版で、ライデン大学図書館の請求記号では、左からSer.39, Ser.39a, Ser.39b, Ser.39cとなっています。来歴も異なり、39にシーボルトの、39cにフィッシャーの蔵書印、39bには「大日本通信使 松平石見守家来 野澤伊久太」からホフマンへ贈られた旨の記載があります。
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よい季節

 
桜咲く日本から「オランダはまだ寒いのか」とのお便りをいただきますが、春分が過ぎてから一気に日が延びてぽかぽかよい季節の到来です。10日くらい前からサマータイムに切り替わり、8時半ころまで明るい今日この頃。気候のよい日は運河沿いのカフェが賑わっています。
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2010年4月2日金曜日

Japanese Book Workshop in Leiden

 
今更ですが、2月26日(金)にBook and Digital Media Studiesのクラスメートと教授、ライデン大学図書館Scaliger Instituteの方々を対象にJapanese Book Workshopを開催しました。パリ在住の日本人保存修復技術者の方の協力も得て、和綴じの実習付き、また医学史分野の教授(Scaliger Instituteのディレクターでもある)から、オランダ語から日本語に翻訳された江戸期の医学書等、シーボルトが持ち帰った資料の紹介がありました。大学図書館のコンサバターの方が、急遽日本産とタイ産の楮のサンプルも持ってきてくださり、好評のうちにお開きとなりました。
Scaliger Instituteは2000年に大学図書館と人文学部によって組織された、スペシャルコレクションを利用した研究促進のための組織です。書庫に眠る日本古典籍(日本から以外の利用が少ないそうです)の紹介の機会として、非常に感謝されました。
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アンケート協力のお願い

フローニンゲン大学に留学中の日本人の方からのアンケート協力依頼です。なかなか面白いので、よかったら以下のリンクからご協力お願いいたします。
------(依頼者からのメッセージ)--------
オランダのフローニンゲン大学では、自動車利用に関するオンライン・アンケート調査を実施中です。
18歳以上の方であれば、どなたでも参加できます。自動車を利用していない方でも回答することができます。
所要時間は約10分で、すべての項目が選択式です。
http://rug.questionpro.com/お時間のあるときにご協力ください。また、お知り合いの方にもご紹介いただけると幸いです。
-------(メッセージ以上)--------------

ライデン大学の日本古典籍

 
だいぶ間が空いてしまいましたが、、、その間にライデン大学所蔵の日本古典籍の森の中に分け入りました。写真はシーボルトの蔵書印がある『倭漢三才図会』からのものです。植物に関する巻には、各項目にラテン名(?)と中国名が、その他諸々のメモが各所に見られます。これはおそらくシーボルトの弟子のホフマン(J.J.Hoffmann)によるものではないかとのこと。

『倭漢三才図会』はライデン大学だけで全部で3セット所蔵しています。シーボルト蔵書印のもののほか、フィッシャーの蔵書印及び蔵書票があるもの(これは一部の巻のみから成る不完全なセットで、あまり使用された形跡がありません)、またジョルジュ・アッペールというフランス人の蔵書印があるものがあります(法律分野のお雇い外国人だった人で、ヨーロッパに帰国後にライデン大学に寄贈したものと思われます)。最後のセットは状態がとても悪いですが、他の2セットはとてもきれいです。
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2010年2月19日金曜日

OAPEN レポート

2009年にOAPEN(Open Access Publishing in European Network)によって実施された、人文・社会科学(HSS)分野の単行本のOAアクセスに対するニーズ調査の報告書全文が公開されました。
http://www.oapen.org/images/D315%20User%20Needs%20Report.pdf

一昔前から始まっているserial crisisに続き、図書館の資料購入予算の削減はHSS分野の学術書(単行本)の市場にも影響し、"monography crisis"と呼ばれる状況が現出しています。(もちろんSTM分野のeJournal購入費の肥大化が単行本の購入費を圧迫していることは言うまでもありません。)

この状況を受けて、e-Monographのオープンアクセス出版の可能性とその要件を、欧州6カ国(多分、英仏独蘭白丁)を対象に、文献調査、研究者(250人)に対するオンラインサーベイ、主要学術出版社、大学図書館へのインタビュー等の方法で調査しています。結論としては、HSS分野の研究者は既に電子リソース、オンラインツールを用いた研究成果の発受信及び教育をある程度行っており、eMonographのOA出版についても品質管理が保証されることを条件に、研究活動、教育活動にとってプラスになると考えている人が大勢である、というようなことが書かれているはずです。(ごめんなさい、私もつまみ食い読みです。)
巻末にオンラインサーベイの質問紙と回答の集計結果が添付されています。

2010年2月4日木曜日

ヨーロッパのデジタル化(数字)

オランダ国立図書館職員H.Crijns氏曰く。

2007年に行われたある調査(実施主体について言及なし、ヨーロッパの国立図書館の連合体CENLに参加する図書館のうち37館が回答)によると、これら37館が所蔵する資料総数 約4億点のうち、
2006年時点で400万点がデジタル化済み
2012年までに1700万点がデジタル化される予定。

博物館・美術館については対応する数字はないが、たとえばオランダだと
国内の主要な博物館・美術館600館の収蔵品(目録があるもの)3600万点のうち、
なんらかの形の機械化された目録があるものは29%~49%、デジタル化されているものが15%~35%、そのうちオンラインで公開されているものは5%程度とのこと。(なんて幅のある数字なんだ・・・。)

所蔵資料のデジタル化というのは、それを行う図書館・博物館・美術館等にとっては、「長期的な負担を伴う、短期的な巨額の投資(short-term investment with long-term burden)」に過ぎない。

それでも敢えてやるのは(はらを決めて行け行けどんどんでがんばっているのは)、 「メディアの覇権交替」はもうどうしようもない現実で、将来に遺したいものはデジタル化しなければ失われてしまうから。(if certain percentage is online, then rest MUST follow.)

2010年2月2日火曜日

リテラシー史 読むことと書くこと

2月1日、後期が始まりました。最初の授業はHistory of Book 2。前期のHistory of Book 1で学んだ技術史、出版史、制度史としての本の歴史についての知識を基礎に、「読み」の歴史、読者の歴史、読書環境の歴史等を探っていく授業です。

比較的受身で済んでいた前期とは異なり、ようやく修士課程らしく、各自で一次資料から研究を進めていく形をとるようです。初日の今日は、研究史の概略と何を一次資料とするか、についての講義。アナール学派、ミシェル・フーコー、ドイツの受容理論、社会学からの影響等を一通りなぞった後、人と本との間にある「リテラシー」の諸相をどのように捉えるかという話が続きました。受講生は、「人はなぜ読むのか」「人はなぜそれを読むのか」ということを共通の課題として、各学生が、ミクロな現象としてのある時代の、ある地域の、ある個人の読書行為を記録したものとして、自伝、日記、手紙、回想録を分析していきます。

2010年1月28日木曜日

英語も壁・・・。

12月に提出したエッセイが返却されまして、コマゴマと英語が直されている…たくさん…。

「アカデミック・イングリッシュ」なるものはほとんど身につけないままの渡欧だったので、課題はできるだけネイティブチェックを受けてから提出するようにしているのですが、このエッセイはぎりぎりで仕上げたのでその時間がなく、「仕方ないわ」と出してしまったのです。その結果、「教授」の肩書きを持つ先生にこんな低次元の修正していただくなんて、本当に申し訳ない、と頭が下がる思いがしました。

で、「申し訳ないです」とメールを送ったところ(他の用事のついでに)、以下の返信あり>

As to your paper: don't be too much concerned about your English. I fully realize how difficult it must be for you to become a fluent speaker and writer of English, and on the whole I think you are doing fine. And I am sure that by the end of this MA your English will have much improved.

やっぱり'a fluent speaker and writer' になるのは難しいのかぁ~とダブルショック。
修士号取得の最終関門は口答試験なんだよなぁ…なんてことも頭をよぎり、深くため息です。

アフガニスタン

クラスメイトのボーイフレンドがアフガニスタンに派遣されることが判明。
ボーイフレンドといっても、日本であれば「旦那さん」に近い関係だと思ってください。彼は職業軍人なので、仕方ないというか、断りようがないというか、、、 恋人としてはどんなに心配かと思います。

そんなニュースがあったので、他のクラスメイトとも自然その話になりました。すると、けっこうどこの国からも派遣しているんですね。「身近な話だけど、自分の家族や友人には起きて欲しくないこと」という類の出来事。

ちょうど今日はイギリスでアフガニスタンに関する国際会議があったようです。日本も元タリバン兵士の社会復帰を支援する基金に財政支援をするのですね。 これ以上の犠牲がなく、アフガニスタンに早く平和が訪れることと、友人のボーイフレンドが一刻も早く無事に彼女の許に帰ってこれることを心から祈りたいと思います。

バンザイ!

先ほど前期最後の課題を提出し終えて、す・べ・て終わりました!!!!!!!
ばんざい!!!!!

我ながらよくがんばった!と思います。
どれだけ忙しかったか、ご披露します。

12月18日 プログラミング最終課題提出
12月24日 マニュスクリプト・プロジェクト1提出
12月30日-1月3日 冬休みin モン・サン・ミシェル&パリ
1月4日  The Library(授業名です)試験
1月7日  Manuscript Books in the West 試験
1月12日 History of Book 試験
1月13日 引越し
1月14日 旧居引渡し
1月15日 Digital Media Technology 試験
1月16日 シーボルト会
1月19日 マニュスクリプト・プロジェクト2中間報告
1月25日 マニュスクリプト・プロジェクト2提出、オランダ語筆記試験
1月27日 Concept in Information Transmission エッセイ提出
オマケ
1月28日 オランダ語会話試験
1月29日 日本語学科学生さんの被験者
1月30日 友人宅へ

今のところ前期6科目中3単位ゲットです。残り3つも滞りなく転がり込んできますように!

2010年1月4日月曜日

ライデン=kakker?

ちょっと前になりますが、とあるオランダの雑誌にオランダ国内の大学のイメージ調査結果についての記事が載っていました。

ライデン大学の学生のは「kakker度」がずば抜けて高い!

kakkerとは何ぞや!?と思って辞書を引いたのですが、辞書になく。クラスメイトに訊くと「英語には対応する言葉がない」、「あまりいい意味ではなく、'snobbish'が近いけど外見に対して使うことが多い」、「若者であればシャツxVネックセーター(又はジャケット)xスラックスx革靴、中高年になると+蝶ネクタイ+アンティーク指輪が典型ファッション」とのこと。(確かにライデンの男子学生はそんな感じ。ウィリアム王子系とでも言うんでしょうか。そして、教授陣もなかなかのおしゃれさんです。マニュスクリプトの教授なんてゴールドと黒の組み合わせを着こなしていましたからね…。)

パリからの帰りの早朝電車で会話した、建設業で働きながら職業教育を受けている若者が、「自分はライデン郊外の出身だけどライデンの街の雰囲気はあまり好きじゃない」というので、何故かと尋ねると「学生ばかりで彼らはunfriendlyでkakkerだから」。彼の中では、単に外見のみならず「他人を見下したような態度をとる、不快な」人たちへの形容のようです。

そこでますます興味が湧きまして調べてみたところ、こちらがかなり的確に説明してくれていました。>
http://dwotd.web-log.nl/dutch_word_of_the_day/2007/09/268_kakker.html
「気取っていて嫌味で、それがファッションにも表れている」という感じですかね。
オランダ人の気質からすると、ネガティブな意味合いであることは間違いなさそうです。

ここに引用したサイトでkakkerな人が好むファッションブランドがいくつかあげられていたので、思わず自分が着ていないかどうかワードローブをチェックしました。Tommy Hilfigerのセーターを発見!やばい、私もkakkerだ…。

私はまだライデンしか知らないのですが、いろいろ話を聞くと、どうもライデンはオランダの中ではやや特異な雰囲気を持った街のようです。もちろんこの街の歴史もあると思いますが、早い時期(中等教育)から職業教育系と学術系とにトラックが分かれる教育制度も影響しているのかもしれません。

ふむ。オランダ、ちょっとづつですがいろんな面を見せてくれます。まだ飽きません。