2010年2月19日金曜日

OAPEN レポート

2009年にOAPEN(Open Access Publishing in European Network)によって実施された、人文・社会科学(HSS)分野の単行本のOAアクセスに対するニーズ調査の報告書全文が公開されました。
http://www.oapen.org/images/D315%20User%20Needs%20Report.pdf

一昔前から始まっているserial crisisに続き、図書館の資料購入予算の削減はHSS分野の学術書(単行本)の市場にも影響し、"monography crisis"と呼ばれる状況が現出しています。(もちろんSTM分野のeJournal購入費の肥大化が単行本の購入費を圧迫していることは言うまでもありません。)

この状況を受けて、e-Monographのオープンアクセス出版の可能性とその要件を、欧州6カ国(多分、英仏独蘭白丁)を対象に、文献調査、研究者(250人)に対するオンラインサーベイ、主要学術出版社、大学図書館へのインタビュー等の方法で調査しています。結論としては、HSS分野の研究者は既に電子リソース、オンラインツールを用いた研究成果の発受信及び教育をある程度行っており、eMonographのOA出版についても品質管理が保証されることを条件に、研究活動、教育活動にとってプラスになると考えている人が大勢である、というようなことが書かれているはずです。(ごめんなさい、私もつまみ食い読みです。)
巻末にオンラインサーベイの質問紙と回答の集計結果が添付されています。

2010年2月4日木曜日

ヨーロッパのデジタル化(数字)

オランダ国立図書館職員H.Crijns氏曰く。

2007年に行われたある調査(実施主体について言及なし、ヨーロッパの国立図書館の連合体CENLに参加する図書館のうち37館が回答)によると、これら37館が所蔵する資料総数 約4億点のうち、
2006年時点で400万点がデジタル化済み
2012年までに1700万点がデジタル化される予定。

博物館・美術館については対応する数字はないが、たとえばオランダだと
国内の主要な博物館・美術館600館の収蔵品(目録があるもの)3600万点のうち、
なんらかの形の機械化された目録があるものは29%~49%、デジタル化されているものが15%~35%、そのうちオンラインで公開されているものは5%程度とのこと。(なんて幅のある数字なんだ・・・。)

所蔵資料のデジタル化というのは、それを行う図書館・博物館・美術館等にとっては、「長期的な負担を伴う、短期的な巨額の投資(short-term investment with long-term burden)」に過ぎない。

それでも敢えてやるのは(はらを決めて行け行けどんどんでがんばっているのは)、 「メディアの覇権交替」はもうどうしようもない現実で、将来に遺したいものはデジタル化しなければ失われてしまうから。(if certain percentage is online, then rest MUST follow.)

2010年2月2日火曜日

リテラシー史 読むことと書くこと

2月1日、後期が始まりました。最初の授業はHistory of Book 2。前期のHistory of Book 1で学んだ技術史、出版史、制度史としての本の歴史についての知識を基礎に、「読み」の歴史、読者の歴史、読書環境の歴史等を探っていく授業です。

比較的受身で済んでいた前期とは異なり、ようやく修士課程らしく、各自で一次資料から研究を進めていく形をとるようです。初日の今日は、研究史の概略と何を一次資料とするか、についての講義。アナール学派、ミシェル・フーコー、ドイツの受容理論、社会学からの影響等を一通りなぞった後、人と本との間にある「リテラシー」の諸相をどのように捉えるかという話が続きました。受講生は、「人はなぜ読むのか」「人はなぜそれを読むのか」ということを共通の課題として、各学生が、ミクロな現象としてのある時代の、ある地域の、ある個人の読書行為を記録したものとして、自伝、日記、手紙、回想録を分析していきます。