2009年12月25日金曜日

"Five Hundred Years of Printing" by Steinberg

(たっぷり遊んだあとの)試験勉強中。 いまいち集中力を欠いています。

ここに紹介するのは、History of Books 1 という授業の教科書ですが、グーテンベルク以降の西洋出版史について、一通り要点をおさえるのにはお奨めです。
S.H. Steinberg (revised by J.Trevitt), Five Hundred Years of Printing,(New Castle/London; Oak Knoll Press/The British Library, 1996)
何よりも、Chapter4(1900-1955)までは「面白い」のがよい(Chapter5はSteinbergの筆ではないため)。

初期のインキュナブラが面白いのは当然ですが、19世紀もなかなか面白い、と思います。技術と消費社会が成熟して、本が多くの人に「楽しまれる」ようになっていった時代。挿絵やレイアウト、ブックデザイン、活字の展開の中に、本が大衆向けのメディアとしての魅力を大きく開花させていった様子が伺えます。

2009年12月12日土曜日

和書の入手

後期の授業で必要になりそうなので(各学生が自国の読書史について発表)、日本の読書史、図書館史、出版史に関する本を集め始めています。

そちら方面に詳しい方からアドバイスをいただいて、最低限必要そうなものに絞って購入したところで、送料だけで約10,000円。

しかし。基本書になりそうなものとして薦めていただいた本のうち、2冊は、日本の大手書店のオンライン販売では「入手不可」と表示され、amazonでは悲しくなるほどの高値が、、、絶版なんですかね。大学経由で注文もできるのですが、2~8週間かかる上、結局「入手不可」になりそうなので、断念。

日本の図書館からの遠隔複写?⇒せっかく送料を払うのに、著作権の制限で半分しか読めないのはちょっと・・・

結局、UKのケンブリッジ大学とロンドン大学SOASに所蔵があったので、1冊10ユーロの送料を払って、図書館間貸出しをお願いすることにしました。(ちなみにオランダ国内でも6.5ユーロかかります。)

グーグルの書籍デジタル化、1日本国民としてはいろいろ思わなくもないですが、 1学生としては・・・グーグルでも誰でもいい、この状況をどうにかしてくれ、、、と思いました。

ちなみに私たち、前期の授業を通して立派な働きバチに育ったBDMS修士課程の学生は、「プロジェクト」の名のもとに、クリスマスも正月もなく、無給でライデン大学所蔵のマニュスクリプトやアーカイブ資料のデジタル化の細々とした作業を行わされて(?)います。まあ楽しいっちゃ楽しいんですが、クリスマスイブが締め切りなんて、ここは本当にヨーロッパなのか・・・

2009年12月9日水曜日

師走

 最終授業と最終課題の提出日とパーティが一日交替で続いているような今日この頃。明日はクリスマス会(こっちではSinterklaas fiestjeだったかな?)なので、プレゼントを用意したり、サンタのふりしてメッセージ(ポエム)を書かなきゃいけないなど、意外と大変。

 本日行われた「図書館」という科目の最終授業は、F. Huysmans and C. Hillebrink, The future of the Dutch public library: ten years on (SCP, 2008) に記載されているオランダの公共図書館の5つの機能についてでした。
  1. 知識・情報の共有
  2. 教育
  3. アート・文化活動
  4. リテラシー、文学の振興
  5. 人同士の出会いの場、議論の場
この5つの機能を、各公共図書館がどのいう優先度、方法(IT含む)で実現していくかによって、各公共図書館を個性が決まってくるよね、という話がまず最初。

 次に、国立図書館の役割はなんだろうか、という話。これについては、
  • まずは、国内における役割と国際的な場における役割における両方を実現する必要があるよね、
  • それから、公共図書館に比べると「教育」の優先度は低くてよいけど、「研究者支援」ということはあるかもしれないね、
  • それから、「人同士の出会い」というよりは、「ビジネスtoビジネス」の関係を作る場を提供していく必要があるよね、
  • そして、専門職の再教育。将来的に「カタロガー」はどれだけ必要だろうか、カタロガーをサービス提供者に変えていきたい、
というような話。
 最後に、大学図書館についてもディスカッションしましたが、これはオランダ特有の事情もあり(大学数が少ない、各大学の個性が希薄等)、講師の提案とヨーロッパ各地からの学生の意見が噛み合わず、やや議論が迷走してしまいました。

 本日はこの後、日蘭通商400周年記念の最終イベントの能鑑賞会をクラスメート数人とともに見に行きました。「井筒」だったんですが、能初心者のクラスメートにはやや静か過ぎたような・・・。ライデン在住の教養ある紳士淑女の皆様は楽しめたのかな?

 オランダ滞在もそろそろ半年なので、ちょっとづつお楽しみも増やしていきたいな、と思います。

2009年12月2日水曜日

マニュスクリプトの最終課題

 冬休みが近づき、前期の授業の最終課題提出の季節です。
 マニュスクリプトの授業は、何も習わないうちから「まず書いてみろ」ということで、ひたすら物を見て記述する、ということの繰り返しだったのですが、一通り習い終わったあとで、あらためて一番最初の課題で取り組んだマニュスクリプトに戻って、すべての記述を正統なやり方でやり直してみる、というのが最終課題でした。
 今となっては、曲がりなりにも翻刻(transcription)も(もちろん、近年の刊本の助けを借りながらですが)できちゃう(ような気がしちゃう)わけで、なんというか、ものすごい達成感。先生、ありがとう!
 マニュスクリプトというのはもちろん手書きなわけで、書いた人の筆跡を辿る楽しみがあります。だんだん字が大きくなってるぞ、とか、読みにくいけどこの人の場合はこれは 't' なのね、とか、この空白はどういうつもりだったんだろうなぁ、とか。印刷本のように必ずしも広く公けへの出版を目的としていないので、かっちり形式が整えられていて読みやすくなっていたりすると、なんでこんなに読みやすくしたのかなぁと想像を掻き立てられます。
 そして、代々の所有者の書き込みも面白い。原本が読みにくいところに、ちゃんとメモが入っていたりして、「ははぁ、あなたも読みにくかったのねん。」とちょっと楽しくなります。
 最終課題提出の記念に、課題本の写真を載せてみました(まだ、試験に通らないと単位にはなりません)。わーい。