昨日、シュプリンガー・アカデミックのAlexander Schimneipennick氏から、オープンアクセス(OA)出版における出版社の役割についての講義がありました。同社は、「著者」を顧客として、OpenChoiceという「OA出版サービス」を展開しています。同時に「読者(図書館含む)」を顧客として、SpringerLinkという「文献提供サービス」を展開しています。(注:SpringerLinkはOA以外e-journal,e-bookも含めてSpringer社の持っているコンテンツをすべて検索できるサービスで、そのうち無料で全文閲覧できるもの(OA)については検索結果の左側に緑の印が出ます。)
結論は、出版社の仕事というのは、とどのつまり、この著者と読者をつなぐ「サービス」であって、「求められている」サービスを提供できれば、それに対して対価を支払う人はいるのだ、ということでした。
では、何が求められているのかというと、著者にあっては
・そこ(SpringerLink)に乗せればより多くの人が著作を読んでくれること
・研究成果がすぐに公開されること
読者(図書館)にあっては
・固定された、安定したコンテンツの所有者(perpetual accessのこと)になれること
・コンソーシアム契約ができること
・付加サービスが得られること(研究成果の地理的分布図、用語辞典のオンライン提供)
そして、この「サービス」の品質管理(Quality Control)のためにSTM出版社の編集者が行うことは、質の高い論文を得るための人脈作り、つまり著者とピア・レビュー要員の確保(ここは昔から変わらないコアの部分)。
OA出版について納得できることは、「公のお金でなされた成果は公に還元されるべき」という主張。一方で、「アフリカの子どもたちを救うために医療情報を無料で提供しなくてはいけない」といったような感情論は妥当でない。なぜなら、学術出版社が扱う情報は基礎研究的なものが大半で、現場ですぐに役に立つといった種類のものではないから。Springerは雑誌記事についてのOA対応はかなり進んでおり、Ebookについても取り組み始めたところ。
著者が、OA出版サービスを購入するという形のビジネスだが、著者の支払う価格はこのサービスを利用する人が増えれば下がることになる。
読者(図書館)の需要を満たすためには、「いったん出版したら原則コンテンツに変更は加えない」ということは非常に重要(Policy of integrety of materials)。(これについては、学生から「なぜコンテンツの入れ替えが容易という電子出版の利点を利用しないのか」という質問があったが、回答は「マーケットが求めているのは安定したコンテンツだから」という回答。)
現在、OAで出版される点数は増えており、STM出版社はこれには対応せざるを得ない(参考:DOAJ, Directory of Open Access Journal)。Springerは著者が自分のウェブサイトや研究助成機関のウェブサイトに論文のpre-printを掲載することを認めている。
同様のビジネスを展開している目下のライバルは、Hindavi, PLoS, Nature.com, Cell Death & Desease。
E-bookについては、E-journalとはやや異なる仕事の組み立てが必要で、目下検討中。
また、現在若い研究者に期待したいリサーチ分野としては、新しいソーシャル・メディアをどのようにSpringerの製品に取り込めるかという点。(「facebookの学術コミュニティへの影響」
について修士論文を書こうとしてる学生がいる、と教官が補足コメント。)インターンでSpringerに来る場合はこの点に取り組んで欲しい。Springerは、研究者のための研究者による出版社だった。ソーシャル・メディアによって我々の在り方が変わることができるのかどうか、というところが我々自身にも未知のところである。
…とだいたいこのような内容でした。より充実した情報はこちらから>http://www.springer.com/open+access?SGWID=0-169302-0-0-0
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