2019年6月28日金曜日

ジャパンサーチ(試験版)のウェブパーツ機能

 ジャパンサーチのウェブパーツ機能が公開されたので、試してみます。


2017年9月21日木曜日

オーストラリアの研究データ関連の取組みについて。

オーストラリアの研究データ関連の取組みの大まかな全体像を捉えようとしている。
(必要に迫られたから)

で、色々見てたが、オーストラリア政府が2017年2月に刊行した、今後10年間(原文ではdecade)に政府が優先的に整備を進めるべき研究基盤についての提言、“The 2016 National Research Infrastructure Roadmap”にまとまってたので、関連するところを抜粋。

まず、研究基盤の整備において、オーストラリアが今後10年間で力を入れる分野としては、次の9分野。
・Digital Data and eResearch Platform 
・Platforms for Humanities, Arts, and Social Science 
・Characterization
・Advanced Fabrication and Manufacturing
・Advanced Physics and Astronomy
・Earth and Environmental Systems
・Biosecurity
・Complex Biology
・Therapeutic Development

このうち、研究データ等に関係するのは上の二つか。その概要を読むと、
  1. Digital Data and eResearch Platform (デジタルデータとeリサーチプラットフォーム)→すでになかなかいいeResearchシステムが出来上がっているので、今後はAustralian Research Data Cloudを構築することで、より統合的で首尾一貫した、信頼性の高いシステムを実現し、データ集約的研究、異分野横断的研究、国際共同研究のニーズに応える。
  2. Platforms for Humanities, Arts, and Social Science (人文学、社会科学分野の基盤) →オーストラリアの社会的・文化的データの発見、アクセス、キュレート、分析のプロセスに変化をもたらすような基盤整備を行う。

ということらしい。

で、1.について詳しく見ていくと、まず、動向分析として、
・デジタルデータへの依存度がどんどん高くなっている
・データは複雑化、膨大化し続け、扱う人間にも高度なスキルが要求されるようになっている
・国際的には、European Open Science Cloudのようなイニシアチブや、データのFAIR原則(findable, Accessible, Interoperable, Reusable)が重要性を増している

といった点が挙げられ、

次にオーストラリアが現状備えているものとして、(1)高性能コンピュータと(2)以下に箇条書きする様々な研究データ基盤がある、と続く。
  • Advanced Research and Education Network (大学、研究機関間のブロードバンド網)
  • Access and Anthentication Services (The Australian Access Federation が提供する学術情報へのアクセスコントロールと認証サービス)
  • 比較的適切に管理された研究データ(財団の出資により運営される組織であるThe Australian National Data Service (ANDS) が、研究者や機関によるデータの管理や連携を支援してきた。またFAIR原則への準拠や国際的な標準や実践についての啓蒙活動も実施している。)
  • 国の研究データストレージ(Research Data Services (RDS)が提供する)
  • デジタルツールとヴァーチャルラボを提供する研究クラウド(National eResearch Collaboration Tools and Resources (NeCTAR)が提供する、データの分析・利用のためのソフトウェアやモデルなどを共有するプラットフォーム)
次の目標としては、ANDS、RDS、NeCTARが連携して、統合的なデータ集約基盤の構築を目指す。これを仮に“Australian Research Data Cloud”と呼んでおり、ヨーロッパのEuropean Open Science Cloud のようなものを目指す、そして連携する、となっている。これは、データの作成、発見、記述、来歴、統合、保管、操作、分析、保存という全てのプロセスを支援する仕組みを目指すらしい。

2. の人文社会学系研究基盤の整備については、オーストラリア国立図書館が運営する
文化資源ポータルTroveの取組みを拡張するような形で、文化資源のデジタル化を進めるとともに、社会科学分野のデータの統合、また先住民研究のための研究基盤を充実させることなどが目標として掲げられている。

とりあえず、今日はここまで。これを調べた動機が、ANDS, RDS, NeCTARの活動のオーストラリア国内での位置付けを確認しようということだったので、第一段階としてはこの辺でまあいっかと。あとは最近の各機関からの刊行物等で個別の連携事業についての紹介があったので見ておく。



2017年9月8日金曜日

公開シンポジウム「ORCID 我が国の学術情報、研究者情報発信強化を目指して」 所感。

今日は、日本教育会館で行われたORCIDについての公開シンポジウムに、聴衆として参加してきた。特に配布資料もなく、かなり情報量も多かったので、以下、自分の理解できた範囲で記録。

組織としてのORCIDは、機関会員からの会費によって運営資金が賄われる非営利団体である(個人が登録する場合は無料)。現在、日本の学協会コンソーシアムを組織して、ORCIDに参加する可能性を探っており、今回のシンポジウムも、学協会に参加を呼びかけるのが主目的だった。

研究者を識別するIDとしてORCIDが世界的に普及しており、主要誌への投稿のために、日本の研究者が個人で登録するケースも増えている。ORCIDの本人に関する情報は、本人申告制を基本とするが、大学なり学協会なりが機関として参加し、個々の研究者情報を補足することで、その情報の信頼性を高めることになり、ひいては研究者支援になる。ORCID IDの取得を義務化する海外出版社や助成機関も出てきている中、このような会員サービスは学協会に必要なのではないか、というのが全体的に感じられたメッセージ。

スピーカーの一人である、物質・材料研究機構(NIMS)の谷藤幹子氏からは、昨今の学術情報流通の様相の変化(例えば“Perspective"といった従来型の論文とは異なる記事の増加、フォーマットがPDFやHTMLからXMLへ、図やデータが独立して流通、テキストマイニング用ファイルの提供)や、それを受けての図書館側の購入方法の変化(電子ジャーナル購入のためにコンソーシアムを組むという10年前のやり方から、各館が自館の利用者に最適な組み合わせを選ぶという方向へ)、また研究者のキャリアパスの多様化(若手を中心に短期で所属が変わる人が増えている、キャリアにブランクがあるなど)といった、ORCIDが有用となる文脈の紹介ののち、NIMSが提供する研究者プロフィールシステムSAMURAIにおけるORCIDとのAPI連携の事例紹介があった。

スピーカーからは、

  • 「非営利団体」といっても慈善団体ではなく、参加するのであれば、日本からも理事を出して、運営に積極的に関わっていかなければ、会費に応じたメリットが得られない。
  • 日本は依然としてデフレが続いているが、世界的にはインフレであり、会費は値上がりしていくと考えるのが自然である。
  • ORCID側で、機関規模に応じた傾斜のある機関会員の会費設定がされていないのが不可解。欧米の資本力ある学術出版社が参加する場合と、日本の小規模な学協会が参加する場合とが、機関会員として同額負担というのは検討の余地がある。

といった論点も挙げられた。

ORCIDに限らず、欧米主導の仕組みに乗っていくとした場合、私自身、この辺りのことが、一番引っかかっていたことだったので、明言してもらえてよかった。1点目、2点目については、参加する場合の「リスク」として管理していくことになるのだろう。

なお、3点目の傾斜負担については、コンソーシアムを作って参加すれば、コンソーシアム内で自律的に傾斜制を取ることも可能らしい。

とりあえず、こんな感じ。資料がいずれ公開されるはずなのだが・・・。

(9/20追伸:資料が公開されていました。https://sites.google.com/view/orcid-j-society/活動履歴

2017年8月29日火曜日

Marco de Niet 氏

調査と標準化活動を通してヨーロッパ内のMLA連携とEuropeanaの運営に大きく貢献している組織DENを11年間率いてきた、Marco de Niet氏の退陣挨拶。

http://www.den.nl/blog/bericht/5984

在任中の最も大きな成果として誇りにしているのがENUMERATE。「歴史の公共性」, 「ユーザから見るとアーカイブズとミュージアムはとても似ている」など言及。

9月から、ライデン大学図書館の副館長に就任。

2017年8月28日月曜日

調査リポート:Europeanaを各種オンライン文化資源サービスと比較するとどのような特徴があるか(2016)

私が崇拝する(?)DENから出た最近の調査リポート。
Europeana as online cultural information service
https://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Publications/europeana-benchmark-report-sep-2016.pdf

Europeanaを他の同様のサービス(有償無償、民間公共問わず)と比較してどのような特徴があるかを分析したもの。調査対象となったサービスは下図のものを含め19種。




結果をざっくり言うと、Europeanaは、他のサービスと比較して、双方向性が「高」、信頼性が「中の下」、使いやすさが「中」。

後半は、どのようにこの調査を行ったか、元になったデータと方法論の話で、ここがまた興味深い。

調査リポート:The Value of Europeana (2013)

Europeanaは、2008年に、EU内の図書館、文書館、博物館、ギャラリーが所有するデジタルコンテンツのサービスプラットフォームとして構築された。

2013年にEUのデジタルサービス基盤向けの予算が大幅削減された時、Europeana事業の継続も危ぶまれた。(参考:https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=6067)2008年から2014年を対象とした初期の助成が終了するにあたり、2015年以降の資金獲得のために
外部調査機関がEuropeana事務局の委託を受けて作成したリポートがある。少し古いが、同様のサービスを日本でやるとした場合に、計画と評価に関して得るところがあるかもしれないので、ざっくり紹介。

SEO Economic Research. The Value of Europeana (2013).
http://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Publications/Europeana%20Strategy%202020-%20Value%20assessment%20SEO.pdf


まず、この調査リポートの調査課題は、下記の通り。

2015年から2020年にかけてEuropeanaのサービスとインフラを維持・拡大するために継続的な投資をすることの社会経済的価値は何か。

コストは当時策定中のEuropeana Strategic Business Plan 2015-2020に基づき、201511日時点での純現在価値(NPV)を5370万ユーロとして計算したそう。

●経済効果
リポートでは、以下5つのユーザグループについて、記載する算出方法に基づき経済効果を分析。

  1. Europeanaで提供されるサービスやインフラはオープンソースであり、これらを利用しているGLAM(ギャラリー、図書館、文書館、博物館)は数百に上る。これらのツールは各機関における一般ユーザ、研究ユーザとのコミュニケーション改善をもたらすと同時に、サービスやインフラの開発コストを削減した。経済効果の算出方法: デジタル化と情報通信システムに関する支出の推定削減値(%)
  2. 一般市民もまた恩恵を受けている。ヨーロッパ内外のアートや文化、文化遺産に関心のある市民がEuropeanaのウェブサイトを訪れ、電子展示会やテーマごとのアクセスポイント(例: Europeana 1914-1918, Europeana 1989)を訪れている。また、ソーシャルメディアでEuropeanaをフォローしたり、Europeanaのアプリをダウンロードしたり、イベントに参加したりしている。経済効果の算出方法:Europeanaウェブサイト、電子展示会、ソーシャルメディアの閲覧時間、Europeanaのオフライン展示会やイベントの滞在時間、各機関のオフライン、オンラインの訪問者増加率(%)
  3. 第三に利益があるのは観光客である。Europeanaが提供するデータベースを用いて作成されたウェブサイト、アプリ、ガイドブックを使っているかもしれない。アートや文化資源に関する情報が入手しやすくなることは、ヨーロッパの魅力向上に役立ち、特に従来あまり知られてこなかった地域や文化遺産の魅力を伝え、集客を図ることができる。経済効果の算出方法:滞在日数または滞在中の支出の推定増加率
  4. 第四のグループは、いわゆる「クリエイティブ・インダストリー」と言われるセクターである。例えば、アートやカルチャー、文化遺産や旅情報に関する本を制作する出版社、歴史的な情報を求めているジャーナリスト、リサーチを行うアーティストやデザイナー、またメタデータを用いるゲームやアプリの開発者などは機械可読性の高いメタデータサービスや、パートナー機関からの一次情報入手により利益を得る。経済効果の算出方法:トップ・ダウン・ビジネスケース
  5. 最後のグループは教育機関と研究者である。デジタルコンテンツへのアクセス向上は教材とeラーニングツール作成のためのコスト削減及び品質向上、ひいては教育の質向上に役立つかもしれない。経済効果の算出方法:教育と研究におけるコスト削減、教育と研究におけるアウトプットの向上

このうち、1と3は、金銭的な定量化がしやすく、2は金銭的ではないものの定量化が容易。4と5は、少なくとも調査時点では根拠となる数値が得難く、定量化しにくいものでした。

後半では、いわゆる「市場の失敗」が存在する、芸術、文化、遺産の領域で、Europeanaのような存在が必要な理由(政府の介入が必要な理由)が大きく6点述べられる。

  • Europeanaは取引コスト(文化遺産や文化情報の発見コスト、また潜在的には第三者に対するライセンシング・コスト)を削減する。これは、クリエイティブ・インダストリーやアプリ開発者、文化遺産についての情報を探す消費者や研究者に波及効果がある。利益が発生しても、個々の利益に対しては相対的に高くつく可能性のある取引コストに鑑みた場合に、ユーザや受益者にかならずしも課金することができず、民間企業の意思決定においては必ずしも適切解が得られない。
  • Europeanaがもたらす標準化なしには、次善の策というロックインにはまり、さまざまな機関が提供するデータベースが分断され、開発コストは嵩み、相乗効果は失われる(loss of synergy)。特に、デジタル化における規模の経済を利用できない小規模館は、標準化と、様々なコレクションのメタデータを統合することを目的推したアプリやウェブサイトとから恩恵を受ける。
  • Europeanaは、民間企業がこの分野を率いた場合に、規模の経済を背景とした「市場支配力」によって生じるかもしれない歪みを緩和することができる。
  • Europeanaは、(取引コストの削減による)付加的な使用許諾(lisencing)の仕組み著作権者に対してもプラスの外部効果をもたらす。
  • 各機関は、いったんデジタル化した情報資源については、利用促進と維持のため、ひいてはデジタル化が経済や福利においてインパクトをもたらすための投資を十分に行わない傾向がある。Europeanaは情報資源の所有にかかる費用を削減することで、このような過少投資を緩和する。
  • EU外の国々との関係でみた場合、いち早く、調整の枠組みを提供し、デジタル基盤についての標準を設定することによって、初動者の利益を得ることができる、他国はEuropeanaの標準に合わせることになる。EU外で標準が設定され、それに合わせる場合よりコストが抑えられる。
以上。

2017年8月26日土曜日

ENUMERATE Observatory

今日は、ENUMERATE Observatoryについて書きます。Observatoryをなんと訳すべきか・・・。「観測所」や「天文台」と訳される場合が多いようですが、ここではEuropeanaの事業計画と遂行に不可欠な統計データを扱う「調査機関」です。

 ENUMERATE Observatoryのウェブサイトには、次のように紹介されています。

ENUMERATE Observatoryは、ヨーロッパの文化遺産のデジタル化、デジタル保存、オンラインアクセスに関する信頼できる統計値を提供する。独自サーベイのほか、既存データを再利用して統計値を集め、結果の分析と公開、また指標の開発や情報ニーズの調査を行う。

以下、ウェブサイトからの情報抜粋して紹介。

設立経緯

ヨーロッパの文化遺産に関連する統計は、確立した手法や集積の仕組みがなく、各文化機関はデジタル化への投資に対する戦略的意思決定を行うにあたって、依拠すべき信頼に足る数値がなかった。10機関によるコンソーシアムとして始まった、課題解決ネットワークENUMERATEは、デジタル化の進捗に関する統計データやナレッジを共有するヨーロッパ全体のコミュニティになった。

2007年から2009年のNUMERICプロジェクトの成果を引き継ぎ、2011年から欧州委員会の助成プログラムとして、2014年からEuropeanaの一部として継続されているENUMERATE事業は、ヨーロッパ内の文化遺産にかかる統計値を集約した点で画期的であった。英国のCollection Trustにおける文化遺産のデジタル化コストにかかる調査結果も取り入れ、 ENUMERATEは今後も統計手法の高度化、サーベイの実施、及びデータ提供プラットフォームの改善に取り組んでいく。

現況

現在は、Europeanaの一事業として、Collection Trust とDEN (Digitaal Erfgoed Nederland)が率いている。Europeanaという実践の場を得ることで、ENUMERATEの専門的知識が生きるという相互恩恵的な関係にある。

<主な活動内容>

  • ENUMERATEフレームワーク、文書、データプラットフォームの維持
  • 各国事務局との調整
  • 2016年にObservatoryの設置
  • 2017年にサーベイ実施(2011年から隔年実施。今回4回目。結果は翌年の場合も。)
  • 今後のサーベイに向けた調査、コンサルテーション

手法とマニュアル


本ドキュメントでは、全体を俯瞰した”high-level"指標と特定テーマを掘り下げるための指標が用意されている。high-level 指標の指標のミニマム・セットは
  • デジタル化資料の増加にかかるもの(需要)
  • デジタル化資料の利用にかかるもの(供給)
  • デジタル化のコストにかかるもの(経済的要素)
  • デジタル保存にかかるもの(サステイナビリティ)
の4領域20指標。

特定テーマにかかる指標は、たとえばローカルシステムにおけるメタデータの登録数などが例であるが、適用範囲はかぎられている。

また、統計に用いる標準語彙が定められている。

各国で、または国際的に行われている既存のデジタル化関連事業のモニタリングの仕組みの一覧。

サーベイ実施要領と結果

過去のサーベイの実施要領と結果が掲載されている。

ウェブサイトからの抜粋は以上。事業運営・継続についての説明責任を果たすためには、ちゃんとした数字があった方がいいのは明らか。意思決定に関わらないレベルのプロジェクトの従事者にとっても、「リアリティ」の中で事業遂行していくためにあった方がいいと思う。




2017年8月25日金曜日

永続的識別子の20年(文献紹介)

Klump, J. & Huber, R., (2017). 20 Years of Persistent Identifiers – Which Systems are Here to Stay?. Data Science Journal. 16, p.9. DOI: http://doi.org/10.5334/dsj-2017-009

インターネット上の情報のいわゆる「リンク切れ(Link rot)」に対する学術情報分野からの解決策として、様々な「永続的識別子(Persistent Identifiers, 以下 PID)」が考案されるようになってから、既に20年余り経つ。PIDの基本的な考え方は、識別の対象の「アイデンティティ」と「ウェブ上の所在情報」を分けることにあった。しかし、皮肉なことに、PIDを管理する組織の持続性を原因として、あるPID体系全体が存続の危機に陥ることもある。本文献は、主要なPIDの過去20年を振り返り、PID運営の成功と失敗の条件を考察したものである。以下、段落ごとに抄訳する。

●PIDの導入状況
研究データリポジトリのレジストリであるre3data.org (http://www.re3data.org)のデータに基づき、PIDの導入状況を見ると、2015年12月に登録されていた1381機関中475機関が何らかのPIDを採用している。複数採用している機関もある。「DOI」「Handle」「PURL 」「URN」「 ARK」「 その他」のうち圧倒的に採用数が多いのはDOIだが、「その他」も相当数あることが注目される。領域特有のPIDがあることを示唆する。機関リポジトリでHandleの採用例が多いのは、DSpaceの機能に組み込まれていることも影響していると考えられる。

●危機の2015−2016年
2015から2016年にかけて存続の危機に陥ったPIDが、OCLCが維持してきたPURLとライフサイエンス分野で普及していたLSIDである。PURLは中央の管理組織や共通のレゾリューションシステムがないことが特徴でそのため、2014年にOCLCが資金援助を辞めたことで危機に陥ったが、2016年からInternet Archiveが運営を担うことになり、新たなレゾリューションシステムも導入されたことで息を吹き返した。現在re3data.orgに登録中16機関で利用されているが、PURLだけという機関は少数である。LSIDは、生物多様性情報学の分野の標準的なPIDとしてTaxonomic Database Working Group (TDWG) が維持していたが、やはり中央の管理が緩く、DNSをベースとした複雑なレゾリューションシステムを用いていた。2016年にシステムの維持が難しくなり、レゾリューションサービスが停止、2ヶ月後に暫定的な対応として
再びサービスが提供されるようになったが、単純な記号管理(Cool URI)への移行が検討されている。

●生き残るPIDの条件
「信頼できるリポジトリ」の基準(criteria)が提唱され始めたのと同じ2008年頃から「信頼できるPID」の基準も提唱され始めた。Bütikoferは技術的・組織的基準を提示し、Duerrは使いやすさ(ユーザビリティ)を重視した。両者の結論には異なる部分もあるが、共に管理組織の持続性を重視している。管理組織の持続性の維持のために必要なのは、運営の透明性だ。運営の議論は公開されていない場合が多いが、付与促進の裏でエグジット戦略が議論されていたりするのは欺瞞である。リゾルバの要否については、今のところ「要」である。というのも、まだ完全なセマンティックウェブの世界が実現されていないからだ。

科学の記録の要素を永続的に、人間にも機械にもわかる方法で識別するということがPIDの重要な役割であるが、これは純粋に技術的な課題というよりも、社会契約(social contract)の問題である。しかしながら、あるPIDシステムに依拠したユーザコミュニティが広がるにつれて、このような社会契約が自ずと強化されると考えるのは幻想だ。商業学術出版社の後ろ盾があるDOIシステムが、現在最も成功している PIDであり、国立図書館の後ろ盾のURNやARKはマイナーな存在に留まっている。商業的な仕組みにうんざりしている一部の学術情報コミュニティのメンバーには呑み込みがたい事実かもしれないが、ビジネスモデルがPIDシステムに不可欠の要素であり、サステイナブルな  PIDは無料ではないのである。(抄訳以上)

 なお、最近の研究データやPIDの動向分析の文献によくre3data.orgの登録データが使われているな、と思う。例えば、これも→https://doi.org/10.1045/march2017-kindling







2012年3月29日木曜日

福島民謡 会津磐梯山

昨日から引き続き、国会図書館から提供されている歴史的音源の話。

提供されている音源の中で一番多いのは、流行歌(歌謡曲)です。有名な「銀座カンカン娘」とか「嵐を呼ぶ男」とか、入っています。が、これらの流行歌は、国会図書館か、国会図書館から配信を受けている公立図書館に行かないと聴けなくて、インターネットで誰でも聴けるものの中で多いのは、

邦楽や民謡。

まず、最初に出てくるのは 『福島民謡 会津磐梯山』
会津地方では盆踊りでも踊られるとか(ほんとですか)。
踊り方はこちらでどうぞ>http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=gy_qMYSrudQ

会津地方でよく知られている民謡『玄如節』が元になっているそうです。(玄如節ももちろん歴史的音源に入っていますが、こちらは図書館限定です。)

2012年3月28日水曜日

「歴史的音源」

某図書館で「歴史的音源」というのを担当することになりました。

これは、明治から昭和にかけて日本で製作された古いレコード(SP盤)などに録音された音楽や音声をデジタル化したもので、日本の国立国会図書館から全国の公立図書館(・・・のうち50館くらい)へ配信されているのです。

一部の音源(著作権が切れているもの)はインターネットでも聴けます。>> http://dl.ndl.go.jp/#music
でも、これはほんの一部(26000音源中たったの600・・・)。配信サービスに参加している公立図書館へ行くと、全26000音源が聴ける、という仕組みです。

収録されているのは、クラシック音楽や声楽曲から、浄瑠璃、長唄、流行歌、民謡、童謡いろいろです。音楽以外にも、尾崎行雄や犬養毅といった有名人の政治演説、ラジオ・ドラマならぬレコード・ドラマ、歌舞伎や新派劇の録音、浪花節などなど・・・今聞いても純粋に楽しめるもの、感動できるものから、歴史的背景への想像を掻き立てられるものまでいろいろあって、聴いているとついつい時間も経つのも忘れるくらい面白いのです。

ただ、まだこのサービスのことがあまり知られていないせいか、そもそも古い音に興味のある人が少ないのか、なかなか図書館で歴史的音源を楽しんでもらえていません。この場で、ときどき、ちょっとづつ紹介できたらな、と思うのです。

帰国、そして復活。

2011年9月に日本に帰ってきました。
しばらく落ち着かなかったのですが、そろそろ書きたいことも溜まってきたので
復活します。

2011年1月19日水曜日

ボーンデジタル資料の収集・保存方針

この1月から、ライデン大学でもボーンデジタル資料(CD,DVD等からオンライン出版物まで含めて)の収集保存方針を策定中です。5ヶ月間のインターン(アムステルダム大学の情報学系の学生)を週3日でつけて、彼女が方針案を書いています。

2010年12月7日火曜日

オランダの新聞デジタル化プロジェクト

オランダの新聞のデジタル化は、オランダ国立図書館(KB)が一手に引き受けてDDD(Databank of Daile Digital Newspapers) というプロジェクトで行っています。KBのご自慢プロジェクトのひとつで、何度か職員の方から説明を受けました。

まず、基本的なこととして、デジタル化は「プロジェクト」として行われ、プロジェクトマネージャーが設置されます。デジタル化までは大きく二つのステップです。

(1)Selection and Preparation (選択と準備)
デジタル化範囲の決定と準備作業を行います。デジタル化対象について、意思決定します。必要に応じて外部の意見も聴取します。意思決定の後は、瑕疵のないコピーを揃え、保管場所を整え、デジタル化に伴う定型作業のワークフローをマニュアル化することがメインです。新聞については、原資料の劣化がかなり進んでいることを考慮する必要があります。既にマイクロ化されている場合は、その利用も検討します。

(2)Digitization(デジタル化)
新聞のデジタル化は、画像作成、OCR、メタデータ作成の3つの作業から成ります。新聞のように雑多な情報が入り混じり、利用者の利用目的も幅広いコンテンツについては全文検索ができないと使い勝手が悪いので、OCRによってテキストデータが作成されますす。(余談:このときの苦労経験が現在EU単位でのOCR精度向上プロジェクトIMPACTにつながっています。)また、充実したメタデータが付与されます。記述メタは、他のデジタル化済資料群と同じくダブリンコアに基づきます。必要に応じて要素を足します。たとえば、朝刊or夕刊の別、地方版の地方等が追加されます。その他、新聞については特に、構造メタ(Structural Metadata) とレイアウト・メタ(Layout Metadata)というのが重要視されます。構造メタはMPEG21-DIDLに基づきます。第何刷の何ページ目に掲載された記事か、という各記事の(概念上の)位置を特定する階層関係が記述されます。レイアウト・メタはALTOという基準です。各記事の、各ページ(平面)における物理的な位置を記述します。新聞は異なる情報の配列が複雑に入り組んでいるので、全文検索の検索結果をハイライトで表示するのに必要だそうです。

KBサイトによるプロジェクトの紹介はこちら>http://www.kb.nl/hrd/digi/ddd/index-en.html

2010年7月17日土曜日

オランダの博物館のコレクション史(図書紹介)

現在のオランダのいくつかの国立博物館に分散するコレクションの歴史について、最近(すごく)面白い本を読みました。

Rudolf Effert, Royal Cabinets and Auxiliary Branches: Origins of the National Museum of Ethnography (English translation, 2008)

オランダで博物館を訪ねる予定のある方は、訪問前に是非ご一読ください。

現在オランダには女王様がいるので、昔から王政がしかれていたかのように思われがちですが、「王国」になったのはナポレオン統治後、19世紀に入ってからです。ハーグの「王立」図書館とアムステルダムの「王立」博物館は、ナポレオンの弟で一時期フランスによって建てられたオランダ王国の王様だったルイ・ボナパルトによって設置されました。

その後、オランダが独立を回復して、かつての総督の血筋であるオラニエ=ナッサウ公ウィレムが亡命先のイギリスから帰国した際に、「王様」になりました。この王様が学術振興に興味を示し、英仏のようなRoyal Cabinets(国内外の美術品や書物、珍しい品々、産品を集めた王様のお宝コレクション)の構築を始めました。

出島の重役にあったブロムホフやフィッシャーが集めた日本の産品や書物は、このRoyal Cabinetsの初期の重要なコレクションになります。人々に公開されたRoyal Cabinetsのコレクションは反響を呼び、乗りのよいオランダ人ですから、市立、私立、なんちゃって国立、、、と制度の整わないうちから博物館が乱立し、各地の商館を拠点に展示品の収集が活発に行われるようになりました。その後、シーボルトが持ち帰った日本の産品も国に買い上げられます。

…が、オランダはなんといっても小さい国、イギリスやフランスに比べると何よりも土地が、そして国の財力、人材も限られています。ベルギーの分離独立後はとりわけ財政的には苦しく、各地の博物館は一方では適切な施設・設備が得られず、一方ではコレクション構築を寄贈、物々交換に頼り、はたまた一方では一人が複数の館長職を兼ねるという悲惨な経営状況に陥ります。

さらに、時代は百科事典的ななんでもありの博物館から、「美術館」「歴史博物館」「産業博物館」「民族学博物館」のように個別化していく方向へ。劣悪な保存環境をかろうじて生き延び、物々交換の対象からも免れた品々をめぐって、各館長間の争奪戦が繰り広げられます。この館長たちがまた個性派揃い。シーボルトのように自分の研究と政治的なことにしか興味がなく、コレクションの管理はまったくできず、むしろ資料の亡失と損傷に貢献した人もいれば、適切な保管環境を確保するための所蔵品の分散配置の準備が面倒で、延ばしに延ばした挙句に他の人に押し付け、最後になって決まった分配に文句をつけて漆器や出島商館模型などの目を引くコレクションだけ自分のものにした館長もあり、そんな困ったチャンに翻弄されながら地道にできる限りのことをした少数の善良な館長がおり…涙と憤りなしでは読めません。

このような状況から、オランダに渡った日本の産品は、オランダ到着後、最終的にその大部分がライデンの民族学博物館に落ち着くまでの67年間、数奇な運命を辿ります。1860年に将軍から送られたたくさんの屏風は、欧州各国の博物館に物々交換されていきました。オランダ国内に残るコレクションについて、いったい何が誰によってもたらされたのか、ということの解明はいまだに続いているそうです。

オランダ語からの英訳なので、やや文意がつかみかねる部分もありますが、近頃読んだ本の中では抜群に面白かったです。当時の関係者の書簡資料も数多く引用されています。

2010年7月11日日曜日

2010年6月24日木曜日

ワールドカップ

日本とオランダ、仲良く揃って第二ステージに進みました。ぱちぱち。
フランス語のチャンネルでゲームを見てたので、あのフランス語独特のふにょふにょした音の「ジャポネー、ジャポネー」が耳について離れません。「エンドォ、セ トレー トレー ボン。」「アブソリュモン シュペー(r)。」うぉうぉ。こそばゆい!

2010年5月19日水曜日

OA出版における出版社の役割

昨日、シュプリンガー・アカデミックのAlexander Schimneipennick氏から、オープンアクセス(OA)出版における出版社の役割についての講義がありました。同社は、「著者」を顧客として、OpenChoiceという「OA出版サービス」を展開しています。同時に「読者(図書館含む)」を顧客として、SpringerLinkという「文献提供サービス」を展開しています。(注:SpringerLinkはOA以外e-journal,e-bookも含めてSpringer社の持っているコンテンツをすべて検索できるサービスで、そのうち無料で全文閲覧できるもの(OA)については検索結果の左側に緑の印が出ます。)

結論は、出版社の仕事というのは、とどのつまり、この著者と読者をつなぐ「サービス」であって、「求められている」サービスを提供できれば、それに対して対価を支払う人はいるのだ、ということでした。

では、何が求められているのかというと、著者にあっては
・そこ(SpringerLink)に乗せればより多くの人が著作を読んでくれること
・研究成果がすぐに公開されること

読者(図書館)にあっては
・固定された、安定したコンテンツの所有者(perpetual accessのこと)になれること
・コンソーシアム契約ができること
・付加サービスが得られること(研究成果の地理的分布図、用語辞典のオンライン提供)

そして、この「サービス」の品質管理(Quality Control)のためにSTM出版社の編集者が行うことは、質の高い論文を得るための人脈作り、つまり著者とピア・レビュー要員の確保(ここは昔から変わらないコアの部分)。

OA出版について納得できることは、「公のお金でなされた成果は公に還元されるべき」という主張。一方で、「アフリカの子どもたちを救うために医療情報を無料で提供しなくてはいけない」といったような感情論は妥当でない。なぜなら、学術出版社が扱う情報は基礎研究的なものが大半で、現場ですぐに役に立つといった種類のものではないから。Springerは雑誌記事についてのOA対応はかなり進んでおり、Ebookについても取り組み始めたところ。

著者が、OA出版サービスを購入するという形のビジネスだが、著者の支払う価格はこのサービスを利用する人が増えれば下がることになる。

読者(図書館)の需要を満たすためには、「いったん出版したら原則コンテンツに変更は加えない」ということは非常に重要(Policy of integrety of materials)。(これについては、学生から「なぜコンテンツの入れ替えが容易という電子出版の利点を利用しないのか」という質問があったが、回答は「マーケットが求めているのは安定したコンテンツだから」という回答。)

現在、OAで出版される点数は増えており、STM出版社はこれには対応せざるを得ない(参考:DOAJ, Directory of Open Access Journal)。Springerは著者が自分のウェブサイトや研究助成機関のウェブサイトに論文のpre-printを掲載することを認めている。

同様のビジネスを展開している目下のライバルは、Hindavi, PLoS, Nature.com, Cell Death & Desease。

E-bookについては、E-journalとはやや異なる仕事の組み立てが必要で、目下検討中。
また、現在若い研究者に期待したいリサーチ分野としては、新しいソーシャル・メディアをどのようにSpringerの製品に取り込めるかという点。(「facebookの学術コミュニティへの影響」
について修士論文を書こうとしてる学生がいる、と教官が補足コメント。)インターンでSpringerに来る場合はこの点に取り組んで欲しい。Springerは、研究者のための研究者による出版社だった。ソーシャル・メディアによって我々の在り方が変わることができるのかどうか、というところが我々自身にも未知のところである。

…とだいたいこのような内容でした。より充実した情報はこちらから>http://www.springer.com/open+access?SGWID=0-169302-0-0-0

2010年5月17日月曜日

ふむ。

Wired Vision『「情報過多の時代」の鍵は「キュレーション」』http://wiredvision.jp/news/201005/2010051723.html
目に見える形、見えない形で起きている情報選別。
原文(英) http://www.wired.com/epicenter/2010/05/feeling-overwhelmed-welcome-the-age-of-curation/

2010年5月10日月曜日

ルーズリーフ式の手帳とか音楽とか

BBCで80年代についてのドキュメンタリーをやっています。音楽からテレビ番組から政治から何から、いかにばかばかしかったか(しかしいかにそれが今につながっているか)というようなストーリーに組み立ててあるのですが、どうやらルーズリーフ式の手帳がヒット商品になったのがこの時代らしいです。「いつもスケジュールがいっぱい!」な"go-faster generation"に受けたとか。

ところで、先日ジュネーブの民俗博物館で民俗音楽に関する展示を見てきました。最後に、現在の国別の音楽の商業的な売上げによる収入が、国の面積比として表示される特殊な地図が展示されていました。

日本、ダントツで大きかったです…。恥ずかしいくらい。

世界的に見て、英語圏の音楽より売れているとは思えないのですが、何かカラクリがあるんでしょうか。…で、やっぱりジャマイカとかルーマニアとかアフリカの多くの国とか、とてもとても小さいわけです。搾取の構造。。。

展示は「見る」より「聴く」展示でした。民俗音楽が記録され商業化していく中で、その調べやスタイルが変わっていく様子を聴いて体験することができるもので、小規模でしたが印象に残りました。