2009年11月22日日曜日

シーボルト会

在蘭日本人研究者の会、シーボルト会に参加してきました。(2回目)

今日はデルフト工科大学で講師&客員研究員をされている方から、都市デザインの話。

「都市デザイン」というのは、都市計画と建築との中間領域なのだそうですが、
政策、文化(歴史)、技術が影響しあって現状があるという意味では、都市環境とメディア環境というのは、ひきずっている歴史の長さや物質文化からの影響の度合いから言っても、けっこう近いのではないか、という印象を持ちました。

そこに+αで理論や思想の影響が入るかどうかという点では、都市デザインのうち、工学的アプローチか社会科学的アプローチか、で違ってくるようです。

日本とオランダではいろんな点で対照的で、たとえば都市機能が東京に集中している日本と違い、オランダではRandstadといって、都市機能をアムステルダム、ハーグ、ロッテルダム、ユトレヒトが分散して持っています。また、山地の多い日本では、自然に都市が発達する地域は限られるため、都市計画に関する規制は都市部にのみ適用されるけれど、オランダみたいにどこまでも平坦で、放っておいたらどこまでも都市になりうる国では、土地利用に関する規制は、ほぼ全域に適用されるようです。

ただし、全国法では手続きのみを決めて、具体的な土地利用規制の中身は市町村が自由に決めてよい。そして、その規制は、原案はもちろん専門家によって作成されるのですが、数字(建ぺい率や容積率)ではなく、具体的な「形」として提示することで、市民(素人)にも中身が分かり、だれもが意見を言える状態が確保されている。(そして、一軒一軒にチラシを入れて、こんな計画があるから、意見があったら言ってね、と広報する。実際、留学生フラットの私のポストにもチラシが入っていました。)

そうやって具体的な議論を積み重ねて、結果としてかなり詳細な規制(ここは自転車を置くところとか、ここの通りの建物の正面は通りと平行な向きじゃないとだめ、とか)が、各市町村レベルで決まっていくそうです。

オランダ人は、意見を言うのが好きですが、それ以上に広報上手、キャンペーン上手でもあります。 政策を分かり易く説明して、市民からのフィードバックを求めるのが上手。

たとえば、水について、オランダみたいな低地帯の国は常に水処理の問題がありますが、まずCMを打つ。キャッチフレーズは Nederland leeft met water (オランダは水と生きる)。そして3ステップで政策を説明する。そしてフィードバックを求める。日本でも、水処理について同じような取り組みがあるそうですが、「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」というやや分かりにくい名称で進められているそうです。

オランダでの積極的な広報と市民参加への対比として、日本の「セクト化」ということが挙げられていました。専門職だけが参加可能な議論によってことが進められていないか、ということみたいです。

そういえば、日本のお役所って「有識者」が好きだよな、と思いました。有識者はもちろんありがたい存在ですが、それが専門家の専門家による専門家のための政策議論に終始してしまっては、たしかに元も子もないですよね。こちらでは、専門家が作成した政策案は、市民の生活の視点からきちんと吟味され、修正を加えられなければ良い政策にはならないということが、専門家にも市民にも共有されているのだと思います。 (ただし、こっちにきて、一部の若いオランダ人からこの市民参加のプロセスをすっ飛ばせば、オランダはもっと迅速な政策判断ができるはずだ、民主主義がこの国をのろまにしている、政策決定は有識者によって行われた方がよいのだ、というような話も聞きました。市民参加の強い伝統を持つ国で、若い世代がそれ以外の可能性について考えるという現象も起きているのかもしれません。)

今日のお話自体は、「オランダが良くて日本が悪い」というのではなく、中立的な、「違い」としての説明でした。やり方の違い、市民の意識の違いはあっても、なんだかんだで日本もちゃんと規制して、緑の確保や災害への備えに努めている。

オランダから見ると、逆に、「雑多な都市環境」や「自然に更新される都市環境」(京都の古い町並みの中にちょっとづつ中層集合住宅が混ざり始める)、「個性的な建築物が許される都市環境」は、夢のまた夢、うらやましくもあるようです。

有意義な会でした。

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